電子決済大国はどのようにして誕生したの?中国のキャッシュレス事情
ここ:
- スーパーでの買い物から公共料金や医療費の支払い、レストランや屋台での会計も今では全てQRコードで行なえる中国。ここではスマートフォンが必要不可欠となりつつあり、電子決済が爆発的に進んでいます。今回は現金離れが進んだ背景にあるQRコードの誕生やその問題点、そして現金からキャッシュレスに移りつつある現状を掘り下げていきます。
- 一般社団法人キャッシュレス推進協議会がまとめた資料によると、中国は韓国、イギリスに続いて世界で三番目にキャッシュレスが進んでいる国です。なかでも圧倒的な支持を得ているキャッシュレス手段は、QRコードを用いた電子決済。中国支付清算協会の2018年の報告書によると、モバイル決済ユーザーのうち78.8%が「毎日使用している」と回答するほど今や生活に欠かせない決済手段となっています。
- QRコード決済の普及を後押ししたのは、スマートフォンの存在です。公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)がまとめた中国のキャッシュレス事情の報告によると、スマートフォンユーザー数は、2007年には5千万人、2012年には4.2億人、2017年には7.53億人、と人口(約13.90億人、外務省による調べ)の半数以上にまで増加しています。この勢いに乗り、消費者と加盟店の両者が取り入れ始めたのがQRコード決済です。
- 中国の2大モバイル決済には、オンラインショッピングを主に2004年にサービスを開始したアリババ集団の「Alipay」 と、中国版Lineともいえるテンセント「WeChat」が2013年に始めた「WeChat Pay」 が挙げられます。いずれも中国で開設した銀行口座と紐づけることで使用ができます。2018年第一四半期には、この二つのアプリが全モバイル決済の90.6% を占めていたことがiiMedia Researchの資料からわかっています。
- 偽札の発行など現金が抱える問題を解消できる一方で、新たに問題となっているのはQRコード決済を悪用した窃盗事件です。方法としては、スマートフォンにウィルスを感染させて、利用者の銀行口座からお金を盗む、貼り出されているQRコードの上に自ら作成したQRコードを貼り付け、自分の銀行口座に入金される仕組みを作る、の二パターンが挙げられます。
- 2018年4月には、南京市で60種類もの偽物のQRコードを貼り出し、利用者から100回以上モバイル決済金額を盗み取ったとして、3人組が逮捕されています。2017年3月に発行された「南方都市報」によると、QRコードの不正利用として盗まれた額は広東省だけで9,000万元(約13億9,000万円)にも及ぶといわれています。
中国では
- 流通している紙幣に古いものが多く品質が悪い。
- クレジットカードを持てる者が少なかったうえに、ICカードのようなキャッシュレス決済に必要な設備投資をできる業者が少なく、この業界に有力な「先住者」がいなかった。
- 「信用」と言う概念を初めて中国に根付かせたのがアリペイだった。
ことも普及要因に挙げられるだろう。こういう分野がその成否を見極めたうえで日本が参考にすべき「社会実験」と言える。
難を言えば(改善点あるいは新しいビジネスの付け入るスキだが)、
- セキュリティに未だ懸念が有る。
- いちいちQRコードを開いたり、アプリをダウンロードするのが面倒である。
と言ったところか。
過渡期としては
といったところが考えられるが、究極には
- 生体認証だけで決済できる。
- 生体認証も、素通りするだけで可能になる。
を目指すべきかと思われる。つまり、スマホベースのビジネスすら破壊することだ。
中国は欧米でスカイネットと呼ばれている天網で個人を識別できるところまで来ている。現状では治安維持に使われている程度で、無論経済効果も有るが(治安維持コストを低減できる)、単にコストセンターとするには惜しいシステムだ。
日本にはこれを可能とする技術も有るが。
しかし現金決済も残るだろう。自営業者の「節税」には適しているからだ。
取りっぱぐれの無い納税システムを構築するためにも国として取り組んでも良いと思われるが。