中国情勢 南院と北院の争い

ここ:習近平、激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 2020/6/21

  • 中国共産党内の序列で、トップの習近平国家主席とナンバー2の李克強首相の対立が最近、顕著になってきた。
  • 22日の開幕式で李氏が読み上げた政府活動報告の中には、2020年の国内総生産(GDP)成長率の数値目標がなかった。極めて異例のことだった。共産党関係者は、習氏と李氏が激しく対立したため、調整がつかなかったことが理由だと説明した。中国の2019年の経済成長率は6.14%だが、今年は新型コロナの影響で、大きく低下することは避けられない。実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求したという。経済成長の目標値に関しては、数年前から二人の対立があった。経済の実態に即した目標を設定したい李氏と、少しでも高くしたい習氏の間で調整がつかず、二人の意見を同時に盛り込んで「6.0~6.5」という幅を持たせた数値目標が発表されたこともあった。
  • さらに、李氏が5月28日、全人代閉幕後の記者会見で「中国の平均年収は3万元(約45万円)だが、月収千元(約1万5000円)以下の人も6億人おり、地方都市で家を借りることすらできない」と発言したことも大きな波紋を呼んだ。自国の高度経済成長を長年喧伝してきた中国人の多くにとっては、「家すら借りられない貧困層が国内に6億人もいる」ことは、初耳だったのだ。李氏が言わなくてもよいはずの「中国の貧困の実態」を暴露した真意については、「習近平氏が推進してきた、2020年末までに全国で貧困を脱却するというキャンペーンに対する抵抗ではないか」との指摘がある。習氏は昨年の全人代で、「2020年末までに全地域を貧困から脱却させる目標を必ず達成するよう」という号令をかけた。習氏はさらに「貧困脱却の基準」について「衣食の心配がなく、義務教育、医療、住宅が保障されていることが基準だ。これを引き下げてはならない」と述べ、この基準を勝手に引き下げるなど、背いた幹部は徹底的に取り締まるとも強調した。しかし、経済運営の実務を担当している李氏は、中国農村部を中心に今も貧困層が多くいる実態を知っている。習氏が目指す年内の目標達成が、絶対に不可能であることもわかっている。年末に大幅な数字の改ざんをしたくない李氏は、記者会見の機会を利用して、「習近平が掲げる貧困脱却の目標は実現できない」と暗にアピールしたわけだ。
  • これまで長年、習氏との対立表面化を避けてきた李氏が、最近になって公然と反抗的な態度を取るようになったのは、新型コロナウイルスの対応を主導し、正しい感染情報などを隠蔽してきた習氏に対し、国際社会から批判が集まり、党内でも習氏の求心力が弱まっていることが背景にある。
  • 本来ならば、中国共産党の役割分担として、トップの総書記兼国家主席は外交と安全保障、ナンバー2の首相は経済を主導する、となっている。しかし、権力掌握を進めたい習近平氏は、以前から経済分野に積極的に介入しており、誰が中国の経済政策を主導しているのか外から見えにくい状態になっている。李氏の周辺に近い共産党幹部によれば、「習氏は、ちゃんとした経済政策を持っているわけではなく、体面などを重要視しているだけだ。北京や上海などで露天商が増えれば、『中国の経済はよくない』との印象を外国に与えるのではないかと気にしているようだ」と説明した。

これまでの中国経済を支えてきた二重経済を推進力とした労働集約型産業における人件費優位性は失われつつあり、輸出ではなく内需による経済の回転、中所得国の罠の突破を目指さなければならなくなっている中国にとって、潜在需要の開拓という観点からも国内経済格差の是正が求められている。

しかしながら、ここへきて、対外イメージ操作重視派と実効的経済政策重視派との間に亀裂が生じ始めている。目的は一致しているのだが。

毛沢東と鄧小平の対立さながらだが、中国人民のためには実効的経済政策重視派が権力掌握することが望ましいものの、二通りのシナリオを用意して対中政策を取らなければならないだろう。

なお、鄧小平は毛沢東と共に粛清された経験も有ったためか、鄧小平は農村で病気にかかった時も薬も無く砂糖水をなめてひたすら体力の回復を待つしかなかったほどに追い詰められてはいたものの、毛沢東もとどめを刺すことまではしなかった。習近平李克強の関係はどのようなものか?時代も違うが。

習近平には、経済も軍事も政治もとにかくあっちゃこっちゃ手を出すがどれも中途半端な印象がこれまで有った。借金まみれながら現状を隠して投資を集め自転車操業するブラックなベンチャー企業の経営者と言ったら、失礼では有るが、わかりやすいか?

対する李克強だが、経済エリートでは有るものの、権力掌握力では習近平に劣る。バックアップが無いと難しいだろう。

日本としては北京派のほうがやりやすいのであろうが。

ちなみに共産党No.2は王岐山だろう。腐敗撲滅が大義名分だが習近平の政敵ばかり粛清しているためこれまで何十回も暗殺未遂が有ったが無傷で生き残っており、「不死身」の尊称を賜っている。本人いわく「霊感が有る」そうである。天才は未来が見えるそうだから、一種の天才なのかもしれない。ただ、No.1になる可能性は無さそうである。

 

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